ゴム採取人はアマゾンの雨林の救世主だと1980年代に環境保護主義者が賞賛して以来、非木材林産物(non-timber forest products, NTFP)で現金収入を得るのは一挙両得の方法だともてはやされてきました。森林コミュニティが森林を守りながら同時に収入も得られるというのです。しかし、「両得」は思っていたよりも難しいことが最近の2つの研究に示されています。
NTFP商品化に関するアフリカとアジア、ラテンアメリカの55の事例を解析した研究がCIFORを中心にして行われました。その結果、NTFPを生計のために採取すればするほど森林の保全はおろそかになると、Koen Kustersらは結論付けました(論文「開発と保全のバランスをとる?」、Ecology and Society誌)。野生の林産物を商業的に採取すると、生物種のレベルではそれらの有用種を枯渇させてしまう傾向があります。一方、森林でのNTFP生産は農地などよりも環境に優しい土地利用なので、景観レベルではNTFPの生産は保全に効果が見られます。
もうひとつの研究では、NTFP商品化に関するボリビアとメキシコの18の事例が検討されました。そして、NTFPからの収入は家計の年間現金収入の7~95%を占め、さらに他の収入源が失敗した場合のセーフティネットにもなっており、地域の貧しい人々の生計にとってNTFPは重要であると、Elaine Marshallらは報告しています(「非木材林産物の商品化」、国連環境計画)。著者らはNTFPの価格連鎖を解析し、貧しい生産者、加工業者、取引業者がそれぞれどうしたら利益の取り分を増やせるのかを解明しました。すると、中間業者はコミュニティが市場へのアクセスや資金的支援の獲得を助ける重要な役割を果たしていることが明らかになり、よくある仲買人の悪い印象とは異なる姿が浮かび上がりました。
NTFPの商品化の「成功」とは何なのか、Marshallらはその定義がそもそも難しいと述べています。これらのNTFP商品化プロジェクトでは、保全と開発の両方を含む複数の目標を立てる傾向があります。また、NTFPがたどる複雑な価格連鎖には様々な段階で多くの人々が関わってきています。これらの事例研究には様々な目標、人々、段階の間の様々な妥協が描かれています。ある立場での成功も別の立場では必ずしもそうではありません。そのため、著者らは、主な利害関係者らとともに成功の基準を確認していくことの重要性を強調しています。
これら2つの研究をもとに、Brian BelcherとKathrin SchreckenbergはNTFPの商品化振興のリスクを評価しました。それによると、この新たな収入の機会を地元のエリートと争っても貧困世帯に勝ち目は少ないので、NTFP商品化は貧困層には悪い影響もありうると警告しています(論文「非木材林産物の商品化:現実性の点検」、Development Policy Review誌)。貧困世帯の勝ち目を増やすためには、NTFPに対する国の政策環境を改善することが地域コミュニティへの直接支援以上に重要であると著者らは論じています。木材製品の収穫や流通のために制定された法規がNTFPに対してしばしば不適切に適用されているのが現状なのです。信用供与の問題など零細企業の発達を妨げている障害も、政策レベルで取組まれるべき問題です。
NTFPの商品化は保全と開発を完全に両立させられる方法ではないことが分かりました。成功への王道もありません。しかし、これらの研究によって地図が示されました。この地図をもとに私たちは自分の行く先を決め、途中で遭遇するに違いない障害物や、回り道や、時には近道も、予め知っておくことができるのです。
(日本語訳 鷹尾 元(CIFOR) g.takao@cgiar.org)