国連森林フォーラム(UNFF) 第7回会合は2007年4月16-27日にニューヨークで開催され、世界中から出席者が集まります。今回の会合では(2015年まで)今後8年間の「多年度作業計画」の採択や「世界の森林に関する法的拘束力を伴わない文書」についての合意が予定されています。もしかしたら、今回がUNFFにとりその存在意義を示せる最後のチャンスかもしれません。もし、今回もまたUNFFが世界の森林の多種多様な危機に取組む重要なフォーラムであるということをはっきりと示せなければ、もう次回はないかもしれないと多くの人々は心配しています。
しかし、デビッド・ハンフリーズの新著を読むと、今回もニューヨークでの成果に大きな期待は持てなくなってしまいます。ハンフリーズは新著「ログジャム:森林減少と地球政治の危機*」で、UNFFなど森林減少に関する政府間の取組みは現在の世界経済秩序を根本的に変えることができず失敗に終わるであろう、と主張しています。
* “LogJam: Deforestation and the Crisis of Global Governance” by David Humphreys, Earthscan, 2006
著者によれば、森林の乱開発を拡大させる鍵となっているのは「新自由主義」というイデオロギーなのです。新自由主義とは国際貿易と投資のルールを牛耳り、企業利益の追求のために公的な制度を変えてしまうものなので、政策改革によって森林減少を食い止めようとする努力はことごとく阻止されてしまうのです。例えば、「森林法施行、ガバナンス及び貿易に関する欧州連合行動計画(EU-FLEGT Action Plan)」は、世界貿易機構(WTO)のルールに抵触しないために二国間の任意の許可制度に限定されています。世界銀行は新自由主義の原理を信奉し債務国である熱帯林諸国の自由化、民営化、構造改革を図るので、同じ世界銀行による森林保護推進の取組みはなかなかうまくいきません。著者は、森林管理協議会(FSC)など、公的機関ではできない部分を市場原理で補う取組みには賛同していますが、規制緩和と民営化による改革という新自由主義的な方法を最初から中心に据えていては森林減少を止められないと考えています。
「ログジャム」ではUNFFと二つの前身、「森林に関する政府間パネル(IPF)」と「森林に関する政府間フォーラム(IFF)」についても章を割いています。ここでは各会合と決定事項を年代順に紹介して、なぜ法的拘束力を持つ森林条約が合意に至らないかを解説しています。筆者は、市民団体などのグループが交渉に影響を与える場としてのUNFFの「マルチステークホルダーによる対話」に対して批判的です。また、メンバー国政府が決定事項の報告や実行をきちんと行わないことを強く批判しています。さらに、筆者によれば、UNFFはいまだに森林関係の他の制度に対してリーダーシップを発揮し進路を示しているとはいえません。UNFFの出席者がこれらの問題を少しでも改善することに関心を向けてくれるといいのですが。
この本は楽観的な話で締めくくられています。筆者は「グローバリゼーションの民主化」という展望を示しました。そこでは、私企業の経済活動に対して公的な規制を行うことも新たな制度により可能となります。そして、すでに筆者はこれの実現に向けた動きの芽を見出しています。さて、今の段階では、「ログジャム」はニューヨークへと向かうUNFFの出席者が機内で眠気を吹き飛ばす格好の読み物となるでしょう。
(日本語訳 鷹尾 元(CIFOR) g.takao@cgiar.org)