POLEX: CIFOR's Forest Policy Expert Listserver (Japanese)
Fast and effective policy alerts

2007年2月15日付け 森林と貧困:そんな単純な話ではない!

Forest and Poverty: No Easy Generalizations

(Thursday, February 15, 2007)


「貧困が森林破壊を引き起こす。」とか、「森林破壊が貧しい人々を傷つける。」と、単純に言い切る人は有罪です。世界銀行の新しい報告書「熱帯林の環境、農地の拡大、貧困の削減は、論争の対象か?」で、Ken Chomitzは「そんな簡単な話ではない。」と述べています。
 
Chomitzは、彼自身そしてCIFORを含む他の多くの研究による膨大なデータと解析をとりまとめています。様々な要因により森林被覆と貧困との間に単純な関係が無いことを、多くの研究が繰り返し示しています。例えばこの報告書では、貧困者率と貧困者密度を明瞭に区別します。森林が多いところほど貧困者率が高い傾向があります。しかし、森林が多い僻地では人口密度が低いため、実際に貧困な人々の数は相対的に少ないのです。
 
さらに僻地では市場や公共サービスへのアクセスが悪い傾向があり、森林を別の土地利用に転換して得られる利益や、貧困から抜けだすための経済活動の障壁となっています。このように、貧困者率が高いことと森林破壊が少ないことは、その両者に因果関係があるというよりも、僻地であるという条件によると理解する方が有効です。
 
Chomitzは、価格、賃金、技術、土地利用権、などの変化が、森林と貧しい農民に与えるインパクトについて知られていることを要約してします。多くの場合、その答えは、「時と場合による」。その他の要因は、それほど不明瞭ではありません。たとえば、僻地に道路を延ばし、道を良くすることによって、貧しい人々の収入が増え、森林が失われます。
 
Chomitzの報告書は、森林と農地がモザイク状に混在するところ、森林と農地の境界や農地開発が議論されているところ、農地開発がおよんでいないところ、のそれぞれに政策的提言をおこなっています。森林保全と貧困解消を両立させる方策や、森林保全と貧困解消の間にトレードオフがある場合の施策は、制度や統治を改善というところに落ち着きます。そして、林地と森林資源に関する権利を明確にして守ることの必要性、経済的な手法が直接の動機付けや合理的な規制に与える可能性について、繰り返し指摘します。
 
Chomitzは、森林破壊と貧困の両方を減らすための道具として、炭素基金に大きな可能性を認めています。気候変動回避のため先進工業国は、貧しい農民が森林を他の土地利用に用いないことに対し、お金を出すことを希望するはずです。追加的な利益として、生物多様性の保全も期待できます。このような資金提供のための国際的合意を形成する議論は非常に難しいものです。しかし議論の結果として、森林破壊を止めるための国家政策が貧しい人々を傷つけるのではなく助けようにすることこそが、本当の課題です。
 
多くの国際援助機関は貧困削減に活動目的の焦点を絞りつつあり、森林保全と貧困削減が常にともに進むと期待する人を喜ばせています。Chomitzの報告は、森林と貧困の関係はそれほど単純ではないことを、思い出させてくれるのです。 


 

今回紹介した、Chomitzの報告、"At Loggerheads?: Agricultural Expansion, Poverty Reduction, and Environment in the Tropical Forests"には、英語版、フラ
ンス語版、スペイン語版、ポルトガル語版があり、下記からダウンロードできます。
http://www.worldbank.org/tropicalforestreport/ (click on "Full Text").
 
今回のPOLEXメッセージに対してコメントしたい方、他の人のコメントが見たい方は、
下記POLEX-Feedback featureをご覧下さい。
http://www.cifor.cgiar.org/Publications/Polex/PolexDetail.htm?pid=762
 
__

訳者より

今回のPOLEXにより、次の2つを思い出しました。ご照覧いただければ幸いです。

2003年11月7日付け 保全のための援助
http://www.cifor.cgiar.org/Publications/Polex/Japanese/2003/2003_11_07.htm
 
2002年7月3日付け 森林の値段:夢想から現実へ
http://www.cifor.cgiar.org/Publications/Polex/Japanese/2002/2002_07_03.htm
 
(日本語訳 森林総合研究所国際連携推進拠点 藤間 剛 <toma@affrc.go.jp>)

森林政策エキスパート(POLEX)メーリングリストは、国際林業研究センター(CIFOR)の無料サービスとして英語版が1997年7月に開始されました。日本語版は2001年12月に開始されました。
このほか、フランス語版、インドネシア語版、スペイン語版もあります。過去のPOLEXメッセージは左のリンクからたどれます。

POLEXの受信を希望する方は、Ms. Ketty Kustiyawati <k.kustiyawati@cgiar.org>に御希望の言語を指定して御連絡ください。