1990年代、世界全体で大気中に放出された地球温暖化ガスのうちの10-20%は熱帯林の伐採や減少によるものでした。森林火災も温暖化ガスの放出に寄与しています。ブラジルとインドネシアの森林減少により毎年大気中に放出される炭素量は、京都議定書が第1約束期間(2008-2012年)に削減を計画している量の80%に相当します。
ブラジルとアメリカの研究者達が、地球温暖化を防ぐために、経済大国は熱帯諸国の森林減少を低減させるための資金を提供する必要があるという論文を発表しました。これにより炭素の放出を減らし、生物多様性を保全するとともに、京都議定書に対する政策的支援を構築できると、気候変動(Climate Change)誌に掲載された論文「熱帯林の減少と京都議定書」の著者達は述べています。
著者達は、森林減少速度をこれまでよりも低下させることに同意する熱帯諸国が、それによる炭素排出削減量を炭素クレジットの購入を希望する企業や国家政府に販売できるようにするべきであると提案しています。これは、京都議定書のクリーン開発メカニズム(Clean Development Mechanism, CDM)で認められている再植林による吸収量の取り引きと似たものになるはずです。しかし、森林減少速度の低下による炭素排出削減量の見積もりについては、天然林と植林地の両方を含み、特定のプロジェクトではなく国全体を対象するという点が異なります。森林減少速度変化の程度については、各国の状況や歴史的な森林破壊の推移を考慮した交渉により定められるでしょう。
著者達の究極的な主張は、2012年の第1約束期間終了後も京都議定書が継続され、より効果的に実施されるには、発展途上国からの炭素排出を制限する方策を講じなければならないということです。地球規模での炭素排出に対する中国、インド、ブラジル等の国々の寄与は増大しつづけており、それらは対策に加えられなければなりません。しかし、先進国に比べて一人当たりの炭素排出量が小さい国々に対して、補償も無しに炭素排出量を制限するのは不公正です。発展途上国の努力を支援する枠組みが必要なのです。
著者達の提案は、新しいものではなく、すでに提案されてきたものを洗練したもので、2013年に始まる第2約束期間のルールを決める国際交渉にむけてのものです。今年11月から12月にかけてモントリオールで開かれる締約国会議で、多くの人が森林減少の低減による排出量削減について議論するはずです。
訳注:地球温暖化防止の国際的な取り組みを定めた京都議定書による、市場メカニズムの導入と森林吸収源の活用については、「小林紀之著.2005.地球温暖化と森林ビジネス 「地球益」をめざして. 日本林業調査会(http://www.j-fic.com).」が参考になります。今年9月に刊行された「第3版」では、世界の様々な動き、第2約束期間の取り組み等、最新の動向が取りまとめて紹介されています。