国際林業研究センター所長David Kaimowitzは、田舎の貧しい人々の生活に森林や樹木が必要不可欠であることを多くの人に伝えるために、かなり多くの時間を割いています。それは、田舎の人々が薪や薬そして食料など多くのものを森林から得ていること、そして森林を失うということは生活基盤を失うのと同じだということを、都会で暮らす多くの人が知らないためです。田舎の人々にとっての森林の重要性を強調するために、「森に住む人」とか「森林に依存して暮らす人々」という呼び方をすることもあります。
田舎で暮らす人々の多くが、農作物を栽培し家畜を飼育していることも忘れてはなりません。これは、政府が森林を残すべきと決めた場所からそこで暮らす貧しい人々を追い出すことが無いよう、森林管理を担当する役人達を説得するときに重要です。森林を残すべきと決められた土地から人々を追い出すことと、その土地での農作業を禁止することに、ほとんど違いはありません。
上で述べた懸念は、Andrew Walkerが感じているところのものです。彼は最近発表した論文「森のために農民をみる-北部タイにおける住民林業と樹上にあげられた農業」の中で、村人の森林に対する権利を森林官に認めさせるため、住民林業の推進者たちは村人たちが森林に依存していると強調しすぎることがあると指摘します。また同様の理由で、村人たちの農業活動を正当に評価しない傾向があるとも述べています。
Walkerは、村人の権利を認めることに問題を感じているのではありません。ただ全ての土地で住民林業をする必要は無いと考えているのです。つまり、それぞれの村人がある面積の土地を利用する権利を認められ、その一部では農耕も認められるべきだというのです。そうでなければ、人々は農業をする土地を失い、住民による住民のための林業という夢は悪夢に終わるでしょう。
Walkerの懸念は、アジアにも南米にも当てはまります。アジアの多くの国では、森林がすでに開墾され人々が長年にわたり農業を営んでいる土地が、法制度上は森林と区分されていることがよくあります。また南米では、先住民族の土地、住民林業対象地、自然保護区等における農耕の重要性を政府が認識していないことがよくあるからです。
田舎の人々の生活に森林が必要であることに開発援助機関が注意を払うよう、働きかけ続ける必要があります。ただしWalkerが指摘しているように、森林の中や周囲で暮らす人々には農耕をする土地も必要なのです。住民林業を計画する場合、長年にわたり農耕がなされてきた土地は、造林対象からはずし農耕地として利用し続けるような配慮が必要なのです。