インドのクマオン(Kumaon)地方の若者フカム・シンは、初めてアグラワル博士に会ったとき、「森林を保全しようなんて、時間の無駄ですよ。」と言いました。シン自身も森林のことを気にしていませんでしたし、近所の人たちが木を切るのをやめさせるなど出来ないと考えていたからです。しかし、8年後にもう一度アグラワル博士に会ったとき、まったく違う話をしたのです。シンは地方の森林管理協議会に入っていて、村人達が森で木材や薪や飼い葉を集め、肥えた土と澄んだ水が得られることから、森林を保全することに誇りを感じていたのです。そこで、
アグラワル博士は、シンと村人達が森林を保全するようになった理由を調べました。
1910年代、植民地政府はクマオンの人々が森林を使うのを制限しようとしました。しかし、その試みは失敗に終わりました。人々は規則を破り続け、抵抗のために森林に火をかけたのです。少数の森林官に多数の村人を止めることなどできませんでした。村長達が森林官に協力した場合でも同様でした。
クマオンの不満を受け、政府は対策委員会を設けました。委員会は森林管理を地方の協議会に任せるよう提言しました。そしてこれまでに、クマオンの村々に3,000を超える協議会が設立されました。協議会は、誰が森林を利用してよいのか、どれだけ収穫して良いのか、使用料はいくらか、そして規則を破った際の処罰について、決定します。
政府が村人の権利を尊重するようになってことから、村人達は森林を注意深く管理するようになりました。村人達自身もまた森林資源が減りつつあることに注意を払っています。それぞれの村人が森林保全に参加することは大切です。多くの人が森林保全に協力するようになったのは、社会的な圧力が高まったのがきっかけです。しかし、森林を守ることにより、人々は森林の価値について学んだのです。森林保全に参加することは人々の良識の一つとなりつつあります。もちろん全ての人に当てはまるわけではありませんが、ハキム・シンにとってはまさにそうなのです。地域の人々に森林管理をまかせることにより、軍隊に森林を守らせるよりも効果的に森林を保全できることがあるのです。