林産物に関する自由貿易協定は、「森林に良い」と考える経済学者もいるでしょう。しかし、それに対する疑念もあります。フィリピンとタイで実施された林産物輸入関税の引き下げ、インドネシアで実施された輸出関税の引き下げが、それぞれの国の森林に与えた影響が調べられました。
1960年代から70年代にかけて、フィリピンは木材輸出国でした。しかしながら、森林資源の過度の利用により、1990年代にはフィリピンは木材輸入国となりました。天然林からの高級材が枯渇したことにより、フィリピンの合板製造業者は農家が植栽・生産する木材を合板原料として使用するようになりました。農家から購入した木材は、材質が悪いために合板表面に使用することはできませんでしたが、合板内部に使用するには十分な材質をもっていました。合板材生産のために植栽された樹木により、環境的な利益も得られていたのです。
フィリピン国政府は1995年には合板の輸入に対して50%の関税をかけていましたが、国際的な圧力を受け、1997年に合板輸入関税を20%に引き下げました。関税引き下げにより、同国内の合板産業は輸入合板との価格競争を戦うことが困難となり、その結果、同国内の合板生産量が少なくなり、木材の販売先を失った農家の樹木植栽への意欲が失われました。
タイでも同じようなことがおこりました。1965年から95年の30年で森林の半分以上が失われたタイも、木材輸出国から木材輸入国となった国です。1990年代、タイ国政府は森林を修復することを目的に、農家による在来樹種の植栽を奨励するため補助金をだしました。しかし、期待されたほどの成果は上がりませんでした。成果があがらなかった原因の一つに、植林奨励策がとられる数年前に木材の輸入関税が大幅に引き下げられたことが挙げられます。製材業者や合板製造業者は、農家が生産する樹木よりも、外国から輸入する安い木材を購入することを好んだのです。
インドネシアには、天然林が残っており、林産物の輸出は重要な産業です。しかしながら、同国の森林は急速に減少し続けています。1990年代後半、政府が木材輸出関税を引き下げたことにより、森林伐採が加速されたと考えられます。
政府は、貿易に関する取り決めや適切な森林政策により、森林の修復を推進するとともに天然林の破壊を避けることができるはずです。森林の持続的な利用のためには、国際貿易機関(WTO)は林産物を他の工業生産品や農産品と区別して取り扱う必要があるでしょう。この考えは、自由貿易を推進する人々から見れば異端なものです。しかし、検討の価値はあるはずです。