今回のPOLEXでは、中南米における森林管理の地方分権に関する研究を紹介します。
中南米諸国政府の福利厚生施策といえば、出生証明書の発行、ゴミの収集、都市公園、 市場、墓地の管理という程度のものでした。しかし時代は変わりました。地方議会と首長は、 住民の健康、教育、生計の向上、そして森林にも注意を払うようになっています。
ボリビア政府は、国有林の20%まで地方自治体が地域住民による利用を請求する権利を認め、 また森林利用権認可による収益の25%を地方森林管理団体の設立に当てています。
ホンジュラス政府は、本来、地域住民に所有権があるのに国の管理下にあった国有林の28%を、 地方自治体が管理することを認めました。
ガテマラ政府は、地方自治体に環境部局を開設することを指示し、環境部局による森林修復事業を支援しています。 地方自治体は、森林伐採契約・利用権認可による政府歳入の50%を使用することを許可されています。
ニカラグアの新森林法は、国有林の管理権に加え管理費を国から地方自治体に与えることを定めています。 その手始めとして地方自治体の代表が、森林政策に関する会議に出席しています。
中南米のほぼ全域で、森林造成、火災対策、森林公園の計画と管理、森林使用権の認可、罰金の課金等に、 地方政府が積極的に関与しています。数百もしくは数千の地方自治体が、森林および環境のための部局を独自に設置しています。
Lyes Ferroukhiが編集した「中南米における分権的森林管理 (Municipal Forest Management in Latin America)」は、 ボリビア、ブラジル、コスタリカ、ガテマラ、ホンジュラス、そしてニカラグアにおける事例研究から、 上で述べた森林管理における地方分権化の流れを研究した書籍です。同書は、地方分権により、先住民、小農家、 小林家そして地方の環境団体が、外部者による望ましくない活動を拒否する機会を得たことを示しています。 しかし地方分権によって、森林保全、持続的森林利用、また先住民の権利等に反対する地域の有力者および団体が、 より大きな力を持つといった事態も生じています。また多くの地方森林部局は、経験を持たない小さなものであるうえに、 技術支援も殆ど受けていません。そして、国の森林部局は地方の森林部局を、協力相手ではなく競争相手としてとらえています。
地方自治体の中には、住民団体やNGOからの圧力によって、森林関連行政を実施しているところがあります。 また、外国からの開発援助や、森林税、利用料といったお金目当てに森林行政を実施しているところもあるようです。 人口が多い自治体の方が環境部局が整っているという傾向はありますが、必ずしもそれが能動的に機能している訳ではありません。 伐採や森林破壊が進んでいる地方ほど、自治体の環境への配慮が少なくなるという傾向もあります。
森林管理の地方分権化は進行していきます。改善すべきところは多々ありますが、地方分権を無視することはできません。 地方分権の成功のためには、地方政府が許認可権、予算および行政能力に関して、より民主的で透明性の高いものとなること、 中央政府は地方政府が汚職にまみれないように注意を払い続けることが、必要です。「言うは易く行うは難し」ですが、 そうでないことなどあるでしょうか?