今回のPOLEXは、インドネシアの地方分権によって、違法伐採とそれにまつわる賄賂がどのように変わったかに関する研究を紹介します。今回紹介する論文は、最近発行されたInternational Forestry Reviewの違法伐採特集号に掲載されたものです。
林業会社は、単に伐採権を得るためだけに、汚職官僚の買収をおこなう気はありません。もしそれだけなら、費用対効果の点で割高になるからです。しかし、贈賄によって、脱税、許認可手続きの簡略化、伐採基準の無視などが可能になるとしたら、贈賄は会社の収支にみあうものになるのです。
スハルト大統領が君臨していた頃、インドネシアの森林企業は、伐採権を得るために多額の賄賂を支払う必要がありました。そして賄賂によって伐採権を得た企業も、伐採に関する法律におおむね従っていたのです。一方、森林官達は、伐採業者が持続的森林経営のための法律に従わなくても、それを無視しがちだったのです。というのは、業者の違法行為を指摘するよりも、合法的に伐採がなされていると見なすことで、より多くの伐採税を徴収することが可能だったからです。スハルト独裁体制は、自分たちの利益を満たすために十分な権力をもっていたのです。
スハルト大統領による独裁時代が終わり、インドネシアは地方分権の時代に入りました。そして行政だけでなく汚職も地方分権が進んでしまいました。林業省は、木材関連企業に対する行政的指導の困難さに直面しています。地方政府は独自の伐採権を認可するようになり、伐採権の許認可を受けない人々が、伐採を実施するようになりました。その結果、多額の贈賄も納税も必要と感じない企業が多くなりました。
違法伐採や脱税の摘発によって、懲役や罰金刑を科せられることは、ほとんどありません。しかしながら、違法行為が摘発される危険をさけるため、かなりの伐採企業が、地方政府役人、軍関係者、警察官等に賄賂を払っています。賄賂の額は、以前よりも少額になり、より多くの人に分配されているようです。企業が賄賂に費やす金額と政府の税収はともに小さくなり、違法伐採の対象となる森林は増加しています。
Joyotee Smith他による論文、「インドネシア、カリマンタン島の違法伐採、共謀する汚職と分断された政府」は、違法伐採とそのための汚職が地方分権によってどのように変わってきたかを、東カリマンタン州(インドネシア領ボルネオ島東部)の3つの郡で、調査しました。上で述べたような変化は、中央集権から地方分権へ移行する際にありがちなものと、Smith達は考えています。伐採権を得るために贈賄をおこなうよりも、伐採に関する法律を破る傾向が高まるため、地方分権により汚職総額が増えることは無いようです。
地方分権化による混乱に直面している人の中には、過去の強権体制を懐かしがる人もいます。しかし、後戻りはできないのです。地方分権と民主化は推進されなければなりません。民主化の過程でおきる汚職の蔓延を解決するには、さらなる民主化しかないのです。社会的な圧力があれば、政府機関の透明性と説明責任を高めることができるでしょう。もちろん時間と多大な努力が必要ですが、できないことは無いのです。嘆くのはやめて、秩序をつくりあげましょう。