今回のPOLEXは、地域住民による環境保全に対する費用負担の話です。地域環境を保全するためには、対象となる地域で暮らす人々が環境資源をよりよく管理すること、そしてそのために正当な対価が支払われるべきことが広く認識されるようになりました。自然環境資源を収奪的に利用するのではなく、生物多様性保全、森林による炭素の蓄積、河川の流域保全、美しい景観の維持などに配慮した利用と管理がなされるには、それらに見合うだけの対価がその地域の人々に支払われる必要があるのです。
エルサルバドルのNGO、PRISMAのHerman Rosa達は、ブラジル、コスタリカ、エルサルバドル、メキシコそしてアメリカで、環境保全に対する支払いが地域の人々に与えた影響について調べるとともに、地域住民がより多くの利益を得ることができる仕組みについて提案しています。
ブラジルのアクレ州政府は、天然ゴムを収穫して暮らしている小農に補助金をだして、森林保全を推奨しています。1ヘクタールあたりの森林に対する補助金は少額ですが、6000世帯を超える人々が、利益を受けています。一方、コスタリカ国政府は1997年から2002年にかけて、森林の保全、管理、修復のために、8000万ドルを超えるお金を土地所有者に支払いしました。しかし、そのほとんどは大規模土地所有者に支払われたもので、低所得の小農や先住民族が受けとった金額はごく一部にすぎませんでした。アクレでは、低所得者層に配慮した仕組みが作られたのに、コスタリカではそうではなかったのです。
ニューヨークはその水源の90%を、デラウェアとキャッツキルという2つの集水域に頼っています。そして、農家による集水域保全プロジェクトを実施しています。このプロジェクトは当初、商業的大規模農家のみを対象としていましたが、現在は小農をその対象の中心に据えています。
自然環境保全により地域住民がより多くの収入を得るようになるためには、土地使用権が守られることが大切です。ただし、それだけでは十分ではありません。メキシコの森林はその大半が地域住民により管理されています。しかし、森林による炭素蓄積、遺伝資源保全、エコツーリズムなどによる利益を得ているのは、よりよく組織されしかも十分な技術支援を受けた住民組織だけなのです。
所得の低い人々が環境保全のための補助金を確実に受け取ることができるようにするためには、誰がどのようにしてその資金を受け取るのかを決める仕組みが必要です。単純に自然環境を保全するよりも、農林業もしくはエコツーリズムといった経済活動を自然資源の保全に配慮して実施する仕組みの方が、その地域で暮らす低所得の人たちにより多くの収入をもたらすことができるのです。
環境保全に対して直接の補助金をだすのは、必ずしも得策ではありません。対象となる地域で暮らしている人々との対話の上で、そこで暮らす人々が本当に必要とする支援がなされる必要があるのです。また、環境保全活動が維持、改善されていくためには、住民組織の能力向上への支援もあわせて検討、実施される必要があるのです。