今回のPOLEXでは、生物多様性保全のための国際援助に関する論文を紹介します。
多くの発展途上国は生物多様性保全のための予算を、国際機関や外国からの援助に頼っています。たとえば、1990年から1997年にかけてラテンアメリカ諸国における生物多様性保全のための予算は、その9割が国外からの支援によるものでした。発展途上国における生物多様性保全には、その国だけではなく外部からの援助の動向を把握することが大切なのです。
国際環境NGO、Conservation InternationalのNicholas LaphanとRebecca Livemoreは最近、生物多様性保全に関する国際的援助の動向に関する調査結果を公表しました。同報告書では、世界銀行、GEF、EC、アメリカ、オランダ、ドイツ、フランス、イギリス、そして日本等、生物多様性保全のための援助を行ってきた機関、国家の動向に関する検討を行っています。それによると、発展途上国における生物多様性保全に対する国際支援は、その熱がさめつつあるようです。イギリス、ドイツ、日本の生物多様性保全に対する援助は、1990年代後半にピークを迎え、その後は減少しています。大使館等の在外公館も、本国の意向に応じたように、環境保全に対する援助予算を減少させています。
援助国側からは、生物多様性保全を発展途上国への援助の中核にしたいという意向も見受けれられますが、必ずしもうまく行っていないようです。多くの援助国・機関は、生物多様性保全に配慮した農林業支援プロジェクトを実施しています。しかし、貧困の撲滅という発展途上国援助の大目的の中では、生物多様性保全はお飾りにすぎないのが現状です。援助国・機関は、生物多様性保全プロジェクトも貧困撲滅の一環に加えようとしています。つまり、自然保護地域から人々を追い出すのではなく、資源の持続的利用を検討しているのです。
上で述べたことは、国立公園の厳正な管理といった伝統的な自然保護プロジェクトへの予算減につながっています。イギリスやオランダで顕著なことですが、自然保護地域から住民を排除するような生物多様性保全プロジェクトへの批判が高まっています。1991年から2001年にかけて保全地域内の保全に1億ドルを支出したGEFでは、保全地域外でのプロジェクトを推進する方針に変更しつつあります。伝統的な国立公園内のみの保全に多額の二国間援助を投入する計画があるのは、ドイツとアメリカのみのようです。
今回紹介した生物多様性保全に対する援助の傾向をどう評価するかは、立場によって違うはずです。LaphamとLivermoreはPOLEX筆者よりも、自然保護地域内での活動に重きを置いているようです。生物多様性保全を達成するためには、自然保護地内での活動も、保護地域外での活動もともに必要なのは、いうまでもありません。また発展途上国における生物多様性保全を実施するためには、その資金のほとんどを提供してきた援助国・機関からの支援を維持する必要があります。今回のPOLEXで紹介した論文には、生物多様性保全のための援助を維持するために必要な情報が整理されています。生物多様性保全に関わっておられる方々のご一読をお勧めします。