今回のPOLEXで紹介するのは、Reduced Impact Logging(森林に与える影響を小さくする伐採技術、RIL) 研究の大御所、Francis Putzの論文です。
熱帯林を持続的に管理、経営するために、伐採が森林に与える影響をできるだけ小さくする方法(RIL) が数多く提唱されています。その方法を大胆にとりまとめると、ある森林での伐採は30-40年に一度、 1ヘクタールから数本しか伐採しない、周囲の木を傷つけないように注意を払う、そして林道をできるだけ短 くするといったことが推奨されています。伐採が森林にあたえる影響を最小限にとどめることで、伐採後の森林 を天然林とほとんど変わらない状態に保つことができるという訳です。
Todd FredericksenとFrancis Putzは、伐採によって森林を強く攪乱するほうが熱帯林保全に貢献できるという、 逆説的な論文を発表しました。彼らは、熱帯林の商用樹種の多くが発芽、生長のために強い光を必要とすることから、 伐採により森林を大きく切り開くことは、商用樹種の次世代を確保するために効果的なことがあると述べています。 樹種によっては、林道の上の方が森林の中よりも次世代が育ちやすいこともあるのです。また、大きくて素性の良い木 だけを選んで伐採すると、伐採後の森林では貧弱で素性の悪い木が主流となってしまうとも述べています。
FredericksenとFrancisは、伐採が森林にあたえる影響を小さくすることは、必ずしも生物多様性の保全に繋がら ないとも述べます。虫を主食とする鳥は、伐採強度が多少異なってもほとんど影響をうけません。自然保護を主張する 人たちが関心を払っている様々な鳥、バク、サルなどは、伐採により増えることすらあるのです。
実際のところ問題は、伐採そのものではなく伐採後の森林管理にあるようです。天然林に伐採がはいることによ り、森林火災が起きやすくなったり、狩猟や農耕活動が加速されるという副次的な影響によって、生物多様性が危機に さらされるのです。単位面積あたりの影響を小さくして広い面積の森林を伐採するよりも、限られた面積の森林を重点 的に利用しできるだけ広い面積の森林を手つかずで残す方が、熱帯林の生物多様性保全には実効性があるとも言えるで しょう。
FredericksenとFrancisは、伐採による影響を大きくする方が生物多様性保全に貢献できる、伐採による影響を 低減する技術は無用である、という主張をしている訳ではありません。持続的な森林経営、数十年後の再伐採のため には、商用樹種の生態的な特性を知り、それに応じた手法を適用する必要があると述べているのです。本来の目的に 応じて適切な手法をもちいること、簡単なようで難しいことです。
POLEX日本語版で紹介された関連研究
2003年5月12日付け もうカナリアは探さない
Looking for canaries (May 12, 2003)
http://www.cifor.cgiar.org/polex/japanese/2003/2003_05_12.htm