疲れてませんか? 咳き込んだり、風邪気味と感じたりしてませんか? もしかすると糖尿病、潰瘍、痛風といったやっかいな病気になっている方もおられるでしょう。もしそうだとしても、あなたはひとりぼっちではありません。多くの人がそれぞれに病をかかえ、そして薬をつかっています。今回、紹介するのは薬用植物に関する論文です。
発展途上国では人口の8割が、その多くが植物からつくられている伝統的な民間薬に頼って、病気の治療をしています。民間治療薬を使うのは、文化的な理由によるものもありますが、多くの場合、薬品会社が合成して販売している薬品よりも値段が圧倒的に安いことによります。そして、先進国の薬品会社でも合成できなくて、植物からの抽出物を使用している薬品もたくさんあります。
薬用植物の中には簡単に手に入るものがあります。たくさん生えているものもありますし、家庭菜園等で栽培されているものもあります。ところが、天然林でしか採集できない薬用植物もあります。そしてそれらの植物は、森林伐採や農地開発によって急速に減少しているのです。薬用植物の減少は、貧しい人々にとっては、薬が無くなるのと同じことです。
CIFORのPatricia Shanleyとブラジル、ミナ・ゲライス州林業研究所のLeda Luzは、アマゾン川河口近くの町ベレンでの9年間にわたる調査から、アマゾンの熱帯林の減少と薬用植物の減少についてとりまとめました。
ベレンの人口は170万人ですが、そのほとんどの人々がなんらかの形で、生薬を使っています。スーパーマーケット、薬局、ガソリンスタンド、道ばたの屋台など、さまざまなところで生薬が売られています。採集したときのままのものもあれば、鉢植えになっていらり、粉にひかれていり、液体にされていたりと、いろんな形で売られています。そのような生薬の原材料となっている植物は200種類を超えています。そして、そのうちの約半分は、アマゾンの天然林から採集されているのです。
ベレンでもっともたくさん売られている生薬のもととなる12種類の植物のうち、8種類は天然林の中にしか生えていないものです。しかも、よく育った樹木から、樹皮や根の一部もしくは樹液を採集するという風に、木を殺すことなく材料を採集しています。ところで、その8種類のうち5種類は材質も良いために商業伐採の対象になり、個体数が急速に減少しています。そして生薬の材料としての採集が難しくなっているのです。このような薬用植物の減少は、貧しい人々が病気になっても薬を飲むことができないという事態につながるのです。
公衆衛生や健康管理はどこの国でも大きな政策課題です。しかし、新しい薬品の開発は注目を集めても、大勢の人々の健康を下支えしている薬用植物の減少には、ほとんど注意が払われていません。天然林の減少や農地への転換によっておこる薬用植物の減少、そして人々の健康管理について真剣に考える必要があるでしょう。