Eric Eckhol著、「もう一つのエネルギー危機、薪炭材」(訳注1)が、世界的な注目を集めたのは、30年近く前のことです。同書は、人口増加と過度の森林利用により、発展途上国の多くで深刻な薪炭材不足がおこり、薪集めを担っている女性や子供達は一日の大半を薪集めに費やすようになると、警鐘をならしました。そして、薪炭用樹木の植林、効率の良いかまどの導入、薪炭ではないエネルギー源の確保といった、薪炭材危機対策プロジェクトで世界のあちこちで始められたのです。
しばらくすると人々は、薪炭材危機は誇張された予測であったと気づきました。そして、多くの薪炭プロジェクトは失敗に終わったのです。薪炭材の価格が期待したほどに上昇しなかったので、農村部の人々は薪炭材のための植林意欲を失いました。政策立案者達は、薪炭材危機は起こりそうもないと考え、薪炭材問題への興味は急速に失われました。
薪炭材問題への興味を失ったのは研究者も同様です。薪炭材に関する研究報告数をTree-CD森林研究データベース(訳注2)で調べると、1982年から1986年の4年間には264編あった薪炭材研究が、1996年から2001年にかけては114編と半分以上に減っています。薪炭材に関する世界的な状況については、現在よりも20年前の方が詳しくわかっていたのです。このようなことから、Mike Arnold, Gunnar Kohlin, Reidar Persson, Gill Shepherdは、「薪炭材再見、この10年の変化」として、薪炭材に関する状況を整理しました。
同書によると、国単位で見ると薪炭材危機はいまだ起こっていないものの、深刻な薪炭材不足に陥っている地域がかなり多くあります。人々は昔に比べて効率的に薪炭材を利用していますが、その一方で薪炭材を確保するために昔よりも多くの労働が必要になっています。森林利用権の変遷は、結果として、貧しい人々を彼らが薪炭材採集に使っていた森林から閉め出し続けています。
世界中では23億人もの人々が、調理や暖房のための燃料をバイオマス(生物体量)に依存して生活しています。また何百万人もの人々が、薪炭材の採集と販売を現金収入源にしています。薪炭材への需要は、アジア地域ではそのピークを過ぎたようですが、アフリカや中南米諸国では急速な増加が続いています。利用方法の点では、ほとんどの地域で薪ではなく炭として使うようになってきています。
都市近郊で商用の薪炭材伐採が行われている場合を除けば、燃料としての薪炭材採集で森林減少が急速に進むことはないようです。また、都市近郊では、いちど農地にされたところから薪炭材が生産されるようになっています。薪炭材への課税を試みた政府もありましたが、薪炭材の価格が安すぎて徴税コストに見合わないことにより、おおむね失敗に終わっています。
薪炭材は、いまでも多くの人々の生活基盤です。薪炭材危機に陥っている国家はありませんが、薪炭材不足に苦しむ人々が数多くいます。政府は、農村の人々が自発的な植林をするような施策を講じる必要があります。また、地域住民による森林管理を推進する必要があります。そして、住民集団の中でもより貧しくて権力の無い人々の権利が損なわれないよう、気をつけねばならないのです。