昔、石炭鉱山ではカナリアを入れた鳥かごを坑道の毒ガス検知に使っていました。もしもカナリアが死んだなら、炭坑夫達は大急ぎで坑道の外に逃げ出したのです。
石炭鉱山のカナリアと同じように、環境の健康度を測るための指標に使われている動物がいます。オーストラリアの鉱山会社は、ある種類のアリがでてきたら採掘後の鉱山周辺の自然が十分に回復したとみなせるものとして、そのアリに注目しています。アメリカの汚水処理施設には、ブルーギル(魚の一種)によって処理した後の排水の水質をチェックしているところがあります。
上で述べたような例と同じ目的で、森林の伐採が生物多様性に与える影響を示してくれる動物種を探すという研究があります。ある動物によって伐採の影響を評価しようという試みです。ブラジルの環境NGO、IPAMの Claudia Azevedo-RamosとOsward de CarvalhoそしてCIFORのRobert Nasiによると、そのような試みはうまくいかないようです。Claudiaらは、これまでに行われた伐採が生物多様性に与える影響を示す動物を見いだすための研究報告を見直して、いままでのところ、適当な動物が見いだせていないと結論しています。
Claudiaらも、伐採が動物の生存や個体数に影響することを認めています。なにが問題かというと、それぞれの動物種が伐採から受ける影響がまちまちなことです。またある動物種がうけた影響から他の種類が受ける影響を予測することは不可能に近いのです。一般論として、伐採をうけた林では伐採されていない林に比べて、虫を食べて生きている鳥の種類が果実を食べて生きている鳥の種類よりも多くなることが知られています。しかし、鳥の種類の変化から、伐採の影響を数値にして評価することはできないのです。
問題は、それだけではありません。森林動物を調査するのは簡単なことではありません。時間もお金もかかります。種類を同定するのが難しい動物も多数います。おまけに動物は動き回ります。そしてある動物の個体数が減っていることがわかったとしても、その原因が伐採によるものなのか、狩猟によるものなのか、判定する方法もありません。
森林管理の指標として坑道のカナリアのような動物が見つかれば良いとは思います。しかしClaudiaらの調べでは、そのような動物はいないようです。カナリア探しはもうやめて、本当にするべきことをすべきでしょう。