イギリスのDFID(訳注1)のような国際援助機関では、野生動物の取り扱いについても検討しています。野生動物もしくは生物多様性の保全は国際的な課題の一つです。一方、国際援助機関の多くは貧困の解消を目標としていて、そこに野生生物の保全をどのように組み合わせていけばよいのか、明快な戦略はいまだ確立されていないようです。
援助に携わる人の中には、田舎で暮らす貧しい人々が本当に野生動物を必要としているかどうか疑問をもっている人もいます。また、野生生物保全と地域開発の両立を目指した援助プロジェクトは経費がかかりがちであることを指摘する人や、野生生物保全を重視しすぎると貧しい人々が保護区から排除されかねないと危惧する人もいます。
上のような問題があるために、DFIDは「野生動物と貧困に関する研究」を実施しました。この研究によると、世界中で約1億5千万人が野生動物を主な食料もしくは現金収入源として生活しています。近年になってエコツーリズムが新しい収入源として、とりあげられるようになりました。ところで、この10年間に世界銀行(訳注2)とGEF(訳注3)が生物多様性もしくは生態系保全に費やした金額は74億ドルに達します。このような環境保全のための援助とその地域に暮らす人々の需要をうまくすりあわせることができれば、自然を保全することで貧しい人々がより多くの収入を得ることができるようになるでしょう。
DFIDの研究報告は、貧困対策戦略の多くは、野生動物に依存して生活している貧しい人々が野生動物の数を減らし、結果として、人々の生活がさらに厳しくなっていくという悪循環を見落としがちであると指摘しています。(一方では、野生動物は耕作物食い荒らしたり、伝染病を媒介したり、人々を襲ったりと、直接的な被害を人々にもたらすことがあります。)このような問題を解決するのは簡単なことではありません。たとえば、人々にとって野生動物に代わる食料を見いだそうとしたプロジェクトの多くが失敗しています。野生生物管理に関する問題は、保全の視点だけではなく、そこに暮らす人々と野生生物との関係という視点に立って考えなければなりません。たとえば、森林伐採企業、伝統的な森林生活者、小農家、狩猟生活者と協働するには、それぞれの集団にあわせた方法が必要です。そしてどの場合でも、本当の協力関係を作り上げるのは、並大抵なことではありません。
DFIDの研究は、東、南アフリカで住民参加型野生生物保全プロジェクトがエコツーリズムによって成功した例を報告しています。地域社会や住民はより多くの収入を得ることができるようになっていました。ただし、援助機関の資金負担も大きくなっていました。援助額を増やさずに地域社会や住民が利益を得ることができるようになるためには、自然資源利用の権利を合意するための簡略な手法、透明で平等な利益分配方法、地域の人々の実務能力の向上等が、必要とされています。
発展途上国にとって観光は重要な産業です。1998年、世界の後発開発途上国49ヵ国の約3分の2の国々で、観光が外貨獲得上位5業種に入っていました。しかし、観光産業では、多くの場合、利益の大半が外部の人々に流れてしまいます。そのため、地域共同体によるエコツーリズム事業、観光企業と地域社会の共同事業、現地職員の技術向上等の取り組みが始まりつつあります。しかし、これらの取り組みについては、今後の評価を待たねばなりません。
DFIDの報告書は、野生生物保全と地域の人々の生計についてはほとんどわかってないこと、そのため自然保全と貧困対策を両立させる適切な方策が見いだしにくいことを繰り返し指摘しています。残念なことに、そのような分野の研究には以前ほど予算がつかなくなっています。詳細な調査に基づいた正確な状況認識無しに、誰が効果的な計画を立てることができるでしょうか?