今週、インドのデリーで始まるCOP8(注1)から、地球温暖化ガス排出削減に関する議論は新たな局面に入ります。前回、モロッコのマラケシュで開催されたCOP7において、開発途上国での新規植林および再植林(注2)が京都議定書12条で規定されるクリーン開発メカニズム(CDM、注3)の吸収源として認められました。2008年から2012年にかけての第1約束期間では、新規植林、再植林しかCDMとして認められていませんが、第2約束期間以降は森林保全や低インパクト伐採施業等の森林の持続的な利用も、CDM事業として認められる可能性が出てきました。
国際林業研究センターのJoyotee Smithとフォレストトレンズ(注4)のSara Scherrは、「森林の炭素と農村の生計(Forest Carbon and Local Livelihoods)」として、CDMプロジェクトが農村(地方)の人々の生計に与える影響について取りまとめました。同書は、大規模植林、小規模植林、アグロフォレストリー、天然更新、住民共同体による森林管理および厳正な森林保全のそれぞれについて、CDMが地域の人々の生計に与える利益とリスクに関する評価を行っています。CDMプロジェクトの形態の違いにより、利益とリスクも異なります。しかし、規模が小さいほど、また住民の参加度が高いほど、地域住民の生計が向上する傾向があります。
小規模なCDM森林プロジェクトではより大規模なプロジェクトに比べて、環境への好影響が大きく、リーケッジ(注5)のリスクが小さくなります。小農家や共同体によるCDMプロジェクトは経済的に実現性の高いものですが、大規模プロジェクトに比べるとコスト高の傾向があります。これは、多数の小規模農家による事業をモニタリングするには費用がかかること、そのようなプロジェクトは多くの場合、生産性の低い土地で実施されていることによります。そのため、小規模生産者にもCDMプロジェクトによる利益をもたらしたいと考えるなら、発展途上国政府は小規模生産者達が大規模プロジェクトに対して競争力を持ちうるよう配慮する必要があります。
JoyoteeとSaraは、CDMプロジェクトの実施にあたっては、地域の人々が従来持っていた森林および土地利用に関する権利が侵害されないようにすべきであると強調します。CDMは、小規模な植林活動、アグロフォレストリー、そして森林再生をも対象にする必要があります。また、規模に応じて簡略化された報告システムを採用する必要があります。発展途上国政府は、地域の人々の土地および森林利用に関する権利を保証し、CDMに関する普及教育およびプロジェクト形成への支援をすることで、国民に利益をもたらすことができます。
クリーン開発メカニズムは、その名が示すとおり環境に悪影響を与えることなく開発に貢献すべきです。JoyoteeとSaraは、CDMプロジェクトの進むべき方向を示しました。