今回のPOLEXは、森林破壊が伝染病の流行をもたらすという研究報告の紹介です。
伐採、耕作、地下資源の採掘等の人間活動は、森林生態系の微妙なバランスに影響を与えます。人間の生活環境を改善するような影響もありますが、逆に環境を劣化させることもあります。今回紹介するのは、森林破壊が人間の健康にもたらす影響について、生物多様性の観点からまとめた書籍です。
人間活動は、森林内の気温や湿度、害虫捕食動物群集、植物の種組成等に影響を変化させます。そして、蚊、ハエ、ネズミ、コウモリ等の伝染病を媒介する動物の増加をもたらすことがあります。森林の周縁部に住む人々は、マラリア、黄熱病、リューシュマニア症、シャーガス病、眠り病等にさらされやすいのです。野生動物の肉を食べることにより、動物から人へ病気が感染する可能性が高まります。
東南アジア熱帯とアマゾン流域では、伐採活動によりボウフラの育つ水たまりが増えたり、水の酸性度が下がったりしたことで蚊が増え、マラリアの流行が激しくなりました。
1997年から98年にかけてマレーシアでは、エルニーニョの影響によって、多くの森林樹木が開花・結実しなかったことから、多くのフルーツコウモリが養豚場に植えられていた果樹に飛来しました。そして、そのコウモリ達が豚にもたらしたニッパウイルス病が人にも感染するのを防ぐため、政府は多数の豚を屠殺、廃棄せざるを得ませんでした。
アメリカ東北部でのライム病の流行も、森林破壊がきっかけでおきたようです。森林破壊によって、シロアシネズミを食べる動物そしてシロアシネズミの競争相手が減ったことにより、シロアシネズミが増加しました。シロアシネズミからライム病ウイルスがマダニにうつり、マダニにかまれた人がライム病にかかってしまうということです。
最近みつかった新しい病気の4分の3は、動物からヒトに広がったものです。病原体をもつ動物を食べるようになったことが、病気の増加につながっています。これは、エイズについても同様かも知れません。そして、エイズのようなウイルスが霊長類からヒトに広がる危険性は高いのです。野生動物の肉を食べることは、炭疽病やペストの流行にもつながっています。
森林火災や森林減少により地球温暖化が加速されます。そして地球温暖化によって、デング熱、マラリア、黄熱病等の危険地域がいままでより広がることが危惧されています。
森林を破壊すると必ず上のような伝染病が流行するという訳ではありません。ただし、注意を払っておく必要があります。現在も続いている森林破壊によって、病気になる危険が高まっているのは確かなのですから。
余談ながら、今回のPOLEXで言及した熱帯感染症については、下記のホームページ等で情報を得ることができます。避けることができる病気は避けるに超したことはありません。熱帯に出かける際には、健康管理に十分な配慮が必要です。
外務省海外安全ホームページ
http://www.pubanzen.mofa.go.jp/index.html
AMDA熱帯医学データベース
http://www.amda.or.jp/index.html